My Sweet Sweet home
期待は的中した。
嬉しくて嬉しくてタバコも放り投げて、ころげ落ちるように階段を下りた。
拓兄が家に入ってくるのとあたしが拓兄に抱きついたのは、ほぼ同時だった。
「おわっ。びっくりしたー。ゆか俺雨でべちゃべちゃだから濡れんぞ。」
拓兄はあたしを離そうとしたけど、あたしはしがみついて離れなかった。
「ばか。雷の日はあたしと寝てくれるって言ったじゃん。うそつき。拓兄のばかー。」
言いながら嬉しさとか安堵とか、怒りとかいろいろ混ざって涙がでてきた。
拓兄は今度はあたしを離そうとはしなかった。
「遅くなってごめんな。話長引いちゃってさ。なかなか出て来れなかったんだよ。」
あたしを片手で抱きしめたままちゃんと中に入り、玄関の扉を閉めた。
「グズッ。は、話合いって何?」
「んー?別れてきた。」
サラっっと言う。いつだって拓兄はサラッと彼女をつくってはサラッと別れてかえってくる。
「は?なんで。」
「んー?意見の相違?なんだっていいだろ。」
さらっと誤魔化された気がしたけど今は嬉しくて、さらに涙が止まんなかった。