My Sweet Sweet home
「お前大丈夫か?」


ある朝朝食を食べながらの拓兄の一言。


「へ?」


あたしはかじりかけのパンをポロリと落とした。

「なにが?」


嫌がらせに拓兄が気づくとは思えない。


女というのは実に周到な生き物で、好きな男には自分の腹黒い部分、絶対にばれたくない部分を徹底して隠すという才能を持っているものだ。


好きな男の妹への嫌がらせもまさしくこれにあたると思う。


「いや、顔色すげーわりぃから。」


あぁ、そういう事か。それならそうだ。


昨日の夜中、あたしの携帯には非通知からの電話が絶え間なくかかってきた。


おかげで一睡も出来ず。顔色だって悪くなる。


「夜更かししてたから。」


「うわ。夜更かしは美容の大敵だぞ。」


「黙れ。あほ。」


茶々を入れてくる修平を一括して心配そうな顔の拓兄に心配しないでと伝え、残りのベーコンに取りかかった。


「…。もしかして俺のせい?」


「は?なにが?んーまぁちょっとあるかな。頻繁に拓兄の部屋で繰り広げられる飲み会に隣の部屋のあたしは何回不眠に悩んだことか。」


何かを勘ぐったような表情の拓兄に一瞬ドキリとしたけど、冗談を飛ばしごまかした。


拓兄はまだ何か言いたそうだったけど、有無を言わさずあたしは席を立ち洗面台に向かった。


別にいい子ちゃんのふりをしている訳じゃない。

拓兄に心配かけたくないから、つらい思いはあたし1人で十分なんていう殊勝な女な訳じゃない。

ただなんとなく。なんとなく拓兄には言わない。

言ったからってどうなるわけでもないし、なんとなく言いたくないのだ。

それ以外に説明の使用がない


元を辿れば拓兄のまいた種とはいえ、あたしは女の戦いに男の拓兄を巻き込むのはひどくお門違いな感じがするのだ。
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