My Sweet Sweet home
綾の目の前にどんどん迫る拓兄。



綾は後ずさりながら震える声で弁解した。



「た、拓海、ち、違うの。これは、その、あたしじゃないのよ。」



そう言いながらもどんどん後ろに下がる綾。



それを追い詰める拓兄。


あたしはなんとなくまずいぞと思った。



「ゆ、ゆかちゃんがね、いきなり椅子を振り回して、あたしじゃなくて、ゆ、ゆかちゃんが、」



とうとう綾は壁に追い詰められて逃げ場がなくなった。



なんとなく拓兄を止めなきゃと思うのだけど、あたしはさっきから拓兄が来てくれた安心感で腰が抜けて動けない。



拓兄はとうとう綾の目の前までたどり着いた。



「あ、あのね拓海、ゆかちゃんに呼び出されて、あ、あたしたちが付き合ってたこと気に入らなかったみ、みたい」



この期に及んで見苦しい言い訳をする綾。



「なあ」



拓兄は綾を真上から見下ろした。



その表情はあまりに冷たい。



その冷たさときたらあたしが綾に同情してしまう程。



「どっちが悪くたっていんだよ。俺にとっちゃどっちでもいいことなんだよ。ゆかが傷つけられたことだけが全てなんだよね。」



ダアン



拓兄は壁を殴った。



綾はヘナヘナと床に崩れ落ちた。



「ゆか傷つけたら俺まじ女でも容赦しねーぞ。」


今度はあまりにもすごみが効いたその声に誰も何も言い返せない。



「俺の気が変わんないうちにお前ら出てけ。」



その言葉にみんな一斉に扉に向かって走り出した。
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