My Sweet Sweet home
綾はヨロヨロと立ち上がるとフラフラと扉前まで歩いていった。



「もし次またゆかになんかしようとしたらそんときはお前殺すぞ。」



綾は何も言わず出て行ったが、その目に溢れんばかりの涙が溜まっているのをあたしは見た。



部屋にはあたしと拓兄だけが残った。



拓兄はあたしの目の前にしゃがみ込むと、髪をクシャクシャと撫でた。



「1人でよく頑張ったな。」



拓兄にピンチを救ってもらう悲劇のヒロインには慣れなかったし、こんな時普通なら涙を流して抱きしめてもらうパターンのはずなのに、涙すら出てこない。



まったくどこまでもずれてるあたし。



でも拓兄は今こうしてあたしの目の前にいる。



"どっちが悪くても関係ない、ゆかが傷つけられた事がすべて"



あたしの善悪なんて関係なくて、結局あなたはあたしにいつだって無償の愛をくれる。



それが全てだ。



あたしは拓兄にニカッと笑った。



「正義のヒーローね。」


幼稚園の時も小学校の時もあたしがいじめられると必ず助けてくれた。



あたしが悪い喧嘩だって拓兄はあたしの見方だった。



「昔からそうだろ。」


拓兄もその事を思い出したに違いない。



「フフ」「ハハ」



顔を見合わせて2人笑った。



「頬痛む?医務室行くか?お前立てるか?」



「立てない!医務室は行かない!」



医務室の女医さんらしき人は拓兄の女じゃない!絶対行かない!



「でも、お前血が」



「絶対行かない!」



あたしの余りの勢いに拓兄は目を点にしてはいはいってため息をついた。
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