My Sweet Sweet home
拓兄は押し戻そうとしたけど、あたしはそれに抵抗した。



「おっまえ、前見えねー。事故るぞ。」



「いいよ。どうせもう傷だらけだもん。」



そう言いながらもあたしは素直に助手席の定位置に戻った。



「……そうだよな。結局俺のせいだよな。ごめん。」



「やけに素直ね。拓兄も脳みそやられた？」



あたしは冗談を言ったけど拓兄は真面目な顔つきで、この冗談は無視された。



「うん、白状するけど俺さ、ゆかが雷の中ひとりでいると思ったらいてもたってもいられなくて帰ってきたんだよね。でもそれで結局ゆかがこんな傷だらけになってんだからな。何やってんだろ俺。」



拓兄は、ハアーとため息をついた。



「ゆかが寂しがるからって帰ってきたのに、結果がこれだもんな。ほんとごめん。」



そう言って、拓兄はあたしのすり傷だらけの顔にそっと触れた。



「違うよ拓兄。こんなの何でもないの。雷の日拓兄が帰ってきてくれなかったら、その方があたしショック死してたよ。」


あたしがそう言うと、拓兄はあたしが大好きな、困ったような優しいような表情でフッと笑った。


「傷いたむ？」



拓兄は優しくあたしの頬を撫でた。



「ぜんぜん痛くない。こんなのすぐ直るよ。」



あたしはこれ以上拓兄に自分を責めてほしくなくて咄嗟にそう言った。



それにこれからまた雷が合った日、拓兄が帰ってこなくなったら本当に困るのだ。それが一番困る。



あたしはどうしても拓兄は悪くないという事を伝えたかった。
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