My Sweet Sweet home
たいてい昼食は、サークル棟にあるサークルの部室で食べている。拓兄がほとんど毎日そこで仲間たちと昼食を食べているというのがそこに行く1番の理由だった。
けれども団体行動が苦手で勝手気ままなあたしは特定の親しい友人がきわめて少ないので、それでもワイワイ楽しく昼食を食べられるスペースがあることを内心喜んでいた。
パン、カフェオレなど適当に買いこみ部室に行くと、拓兄含めもう結構な人数でにぎわっていた。
「ゆかちゃーん」「遅いよー」「待ってたよー」
部屋に入った瞬間から男性陣にチヤホヤされるあたしに、女の先輩が冷たい視線をおくるなんてのはまだかわいい嫌がらせの域。
あたしが他の男にチヤホヤされていると決まって拓兄は「ゆか、来いよ。」って隣をポンポンしながらあたしを呼ぶ。
その時の女先輩方の影のにらみといったらすさまじい。あたしに対してひやりと発散するなにかで身震いしてしまいそうになるほど。
けれどもあたしはこれを一向に意にかさない。むしろこうなることを望み、こうなるよう仕向けたのは他の誰でもないあたし自身なのだ。
初めはみんなこうじゃなかった。
「拓海くんの妹なんだー。すごくきれいねー。」「わからないことがあったら何でも聞いて。」「こんな美人の妹さんなんて知らなかったわ。仲良くしましょうね。」
絶対嫌よ。
あたしの気持ちもよそに、みんなあたしに気に入られることで拓兄との距離を縮めようと、こぞってあたしをチヤホヤした。
そんな時のあたしの返答第1声はもう昔から決まっている。
”でも血はつながってないの。”
ね?って拓兄に甘えながらくっついていくあたし。
「まぁな。」って彼が賛同したまさにその瞬間から、先輩たちの媚うる目はきょうれつに冷たい視線に変わるのだ。
滑稽なくらい昔からみんな同じ。
でもこれでいい。
あたしは妹でなんかいたくない。