野球部彼氏。
1組からは、
誰の声もしなかった。
ひょこっと教室を覗く。


「シロ〜?」


教室の電気は消えていて、
窓からの光だけで、
照らされていた。


「瀬奈ぁ」


後ろの方の席で一人、
机に突っ伏しているシロがいた。
野球部大勢でいる所ばっかり、
見てきたから、
この光景はなかなか見慣れない。


「一人でおるとこ、初めて見た~」


あたしは、シロの前の席に座って言った。
机に突っ伏したまま、
顔だけをくいっと上げたシロは、
くしゃっとした笑顔で、


「坊主野郎いっぱいやったら、
瀬奈、入りにくいやろ?」


なんて言う。
ちょっとした優しさが、
あたしの“好き”を大きくした。


「坊主のくせに~」


照れ隠し。
でも本当は、嬉しかった。
死ぬほど愛おしいと思った。


本間、好き―。


「会話なってへんし~!」


そう言って、
シロはあたしの頭をくしゃってした。
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