野球部彼氏。
放課後、6組へと向かう。
家が近いこともあり、
同じ中学校の友達と、
毎日一緒に登下校していた。


「米しゃん、帰ろ」


米原だから、米しゃん。
小さいから、米しゃん。
小学校からずっと、そう呼ばれている。
米しゃんとは、
小学3年生からの付き合い。


「あ、瀬奈!ちょい待ってや」


教室をそろーっと覗くと、
米しゃんは窓側の席で、
クラスの友達と話していた。
クラスには、
坊主もちらほら見かけた。


「お待たせ〜」


米しゃんが廊下に出てくる。
米しゃんの友達達から、
なんだか視線を感じた。


「何かめっちゃ見られてんけど」


5組の前らへんに来てから、
米しゃんに呟いた。
米しゃんは微妙な顔をした。


「千波が城川くんのこと、好きらしいねん」


確か米しゃんの右隣にいた子だ。
綺麗な黒髪が印象的だった。


「そーなんや...」


尾野ちゃん情報は、
かなり正しいみたい。
他にも何人かいるらしい。
あたしもその中のひとり。


「瀬奈からメールしたら?
早うせな取られてまうで〜」


にやにやしながら、
あたしのほっぺをつついた。


2組も通り過ぎ、1組の前を通る。


「おったぁ...」


心の中でつぶやいてみる。
あたしの中で、
静かに城川祐輔は大きくなっていた。
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