愛の華






「……り…朱里…朱里!」




目を開けた瞬間に感じられた温かい背中

腕は前で組まれている。


あぁ、寝てしまったんだ―――…


私の悪い癖だった。

寝つきが良すぎるせいか、すぐに何処でも寝られるという癖


しかも、なぜか三木雄也さんに背負われていた。



「話の途中だったのに寝ちゃったんだよ、朱里…。

 とりあえずおんぶして送ってこうと思って"薗田"っていう表札捜してんだけど…」

「……す、すみません…!」



焦って降りようとする……―――が、

三木雄也さんは持っている私の両足を離そうとはしなかった。


起こさないようにと気を使い、しかもおんぶされたままだなんて…

申し訳ないにも程がある。


だから降りようとしてるのに――…。


「いいよ。寝起きで体動かないでしょ?」


優しい笑顔でそう言い、構わずに歩き続けた。


宏太にもこんなふうに、おんぶしてもらったっけ――…

そう思いながら、背中に顔をくっつけて甘えた。


「そういえば…朱里って何歳? 中学生?」

「ち、違います! ……これでも大学生です…。休学してますけど…」



少しカチンと来たため、頬を膨らませてそう言うと…

あなたは笑った。

宏太みたいな嘘のない笑顔で…笑った。



「大学かー…。俺まだ19なんだけどね、働いてんの」

「……………」

「……―――朱里?」



おんぶされているのに、こんなにも体が重く感じるのは何故―――…?


あなたを思い出しているから…?

それとも、三木さんの優しさが私にのっかっている様だから…?





きっと…―――三木さんが宏太と似すぎているから




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