愛の華
体を押し付けるように、顔をうずめた。
三木さんの背中が、まるで宏太の背中のように思えてきて…
私はあなたの背中に守ってもらおうとした。
「…………」
けど、三木さんはそんな動作をした瞬間に私を降ろした。
寝起きだった私の体は、降りたときに足がふらついた。
そして、三木さん―――…あなたと向き合った。
「…俺じゃ無理?」
「え…?」
「俺じゃ…その男の代わりになれない?」
フワッとした香りに包まれ、あなたに抱きしめられた。
こんなときに宏太を思い出してしまうのは…どうして?
こんなにも優しくて素敵な男性に抱きしめてもらっている
"女"としてみてもらっている
なのに…――私はどうしてここまで…?
「自信ある…。朱里を、その男よりも愛する自信が…」
そこまで言うなら…
なんて、そんな気持ちはない。
ただ、私の何かが変わったのは確かだった。
…――人を信じてみよう、と。
宏太以外の人のことも、信じてみよう…と。
ふと、目を三木さんのほうに向けると…
…――あなたの後ろで、桃の花びらが寂しく散っていました。