愛の華




「俺だって言いたくて言ってるわけじゃないんだよ…。
 ただ、お前にこれ以上辛い思いしてほしくないんだ…」

「光…」



"辛い思い"ってどういう事――…?


三木さんは私に、辛い思いをさせるってことなのかな…。


分からない。もうわけが分からない。


光がどうしてこんなにも三木さんのことを拒むのか…


理由を言ってくれなければ納得出来ない。



「宏太と約束したんだよ…。お前を守るようにって。」

「………」

「だから…俺が命かけてでも守らなきゃならねーんだよ…!」



一生懸命に私のことを説得させようとする光は、どこか必死な気がする。


三木さんのことをよく理解している上で、そう言ってくれているのかもしれない。


…理解しているから、私と三木さんを近づかせたくない…そんな感じだろう。


だったら私にも、三木さんを理解する義務がある。


光の知っている三木さんと、私の知っている三木さんは違うかもしれない。



「ごめん、光…」



肩をつかむ光の手を、軽く振り払った。


心の中で、"ごめん"と何度もつぶやきながら―…。



「もし光の想像している三木さんが本当の三木さんだったら…
 私はすぐに光の元に帰ってくるから…。」

「………」

「安心して?
 宏太と光の約束、絶対にやぶらせないから…。」



宏太がいなくなった時以来、人前では見せなかった笑顔を…


私は今、光の前だけで見せた。





 


< 18 / 32 >

この作品をシェア

pagetop