愛の華
「朱里…お願いだから俺を見て…?」
今にも泣きそうな声で、三木さんはそうつぶやく。
さっきの態度とは違くて、今度はなんだか弱々しい…。
三木さんの本当の姿が、私の目には映らなかった。
…三木さんが何を考えているのかも、私には分からなかった。
「俺ね、その"宏太"って奴のことよく分かんないけど…
そいつよりも朱里を愛する自信あるよ…。…――約束する」
三木さんは、右手の小指を立てて私の前に出す。
私よりも数段と大きい三木さんの手は、予想以上に指が長かった。
その指が…約束が、私を束縛してボロボロにするなんて…全然思ってもいなかったよ―。
そんなことも知らずに、私は自分の右手の小指を立てて前に出した。
この人なら私を愛してくれる――…
そう信じて…その末に、三木さんは私の小指に自らの小指を絡めた。
これが、私に与えられる試練だなんて思いもせずに―――…。