愛の華




「朱里…」



いきなり立ち止まる雄也。


私が一歩だけ前に出てしまい、雄也の隣に戻ろうとする。


でもそうする前に、雄也に後ろから抱きしめられた。



「もう離さない…。
 お前のこと…俺が守るから…」



耳元でそう囁く雄也。


ふわっと香る、香水の香りが…


私を優しく包んだ。


でも、このときに少しだけ変に感じたことがあった。


香水の香りが、幾つもの香りに別れている。


たくさんの香りが充満している気がした。


なんとも思わなかったけど…ただ、怖かった――…。


"離さない"と言ってくれた雄也が、離れていっちゃうんじゃないかって…。


宏太みたいに、いきなりいなくなっちゃうんじゃないかって…。



「朱里? …どうした?」

「………」

「朱里…?」



"離さない"という言葉を、行動に示して――…?


私に愛を感じさせてください――…。




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