愛の華






そしてまた、今度は愛の華が散る季節に―――…

出会いが訪れました






あなたと別れて、一ヶ月が経った今日

ちょうどこの日に、あなたに別れを告げられた


思い出にしたくはなかったけど

こうする以外に、わりきる方法はなかった。


ちょうど今、少し肌寒いけれど、夜の散歩に出ている

あなたとは、こうして一緒に夜道を歩いた。


…でも、今では一人

隣にあなたが居てくれている気がして、思わず右手をにぎってしまう。


「…………いないよね、宏太…………」


つい悲しくて涙がながれてしまう私の瞳には

誰もうつってない気がした。


心から許せる人が、信じられる人が

私の瞳にはうつらなかった…はずだった


「…―――あっ」


私の瞳にうつったのは、人ではなく…車だった


思い切りスピードを出し、私のほうに突っ込んでくる。



…――前にもこんな光景を見たことがある気がする

たしかこのあとは――――



なんて、頭の中で考えていると

私は誰かに抱きつかれ、そのまま地面に転んだ。


「…なに…?」


転んだ拍子に擦った腕をおさえながら、私は起き上がる。

すると、目の前に一人の男性の姿があった


「…はあ…はあ…。何やってんだよ、あんた!」


その男性は、夜だというのに大きな声を出す。

真剣な眼差しで…――そう、宏太みたいに。


宏太はこうやって、真剣に私を見てくれていた


この男性の瞳は宏太と似ていて、ずっと永遠に見つめていたくなるような瞳だった


「車が来たのに避けようともしないで…俺がいなかったら轢かれてたんだぞ!?」


そういえば宏太も、夜とか関係なしに怒鳴ってたこととかあった

…この男性、もしかしたら宏太なのかな…


また、一からやり直せるのかな―――…。


「……――――宏太?」


最愛の人の名前を呼んで、あなたの頬に手を触れた

そして、じっとあなたの瞳を見つめていると…


あなたが本当に目の前にいるような錯覚を起こした。

瞬きをする度に見える顔は、宏太の優しい顔だった








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