愛の華
「もしかして酔っ払ってんの?」
「え…ち、ちが―――」
「家が近くなら送ってくから」
男性は聞く耳も持たずに、その場から立ち上がった
…―――やっぱり似ている。
あなたも、こんなふうに言葉を遮っていた―――…。
その度に私は少しだけ怒って、あなたは笑って、
……楽しかった。
「なあ、聞いてる?」
男性の姿を見ていると、いきなりまた声をかけられた
私の心に、まだ宏太の姿が残っているせいで…錯覚を起こしてしまう。
この声までもが宏太みたい――…などと、ありもしないことを考え込む。
「…ごめんなさい…」
そう一言言って、私も立ち上がった。
「じゃあ行くぞ」と言い、私の前を歩くあなたの後姿は
抱きついてしまいたいほど宏太にそっくり―――。
「…宏太…」
また漏らしてしまった、最愛の人の名前
あんなに愛してしまったせいで、別れた後にこんなにもあなたを思い出さなければならない…
辛いよ、辛すぎる―――…。