愛の華



「あ……」


男性は、いきなり立ち止まった。

暗い青い空を見上げて、何かを見ていた。


「…どうしたんですか?」

「見て…」


その男性は一点を指差した。

そこに見えるのは…―――桃の花。


綺麗に散りつつある桃の花は、どこか寂しそうな気さえする

もしかしたら、桃の花は咲いたことで綺麗になり、誰かに見てもらいたかったのかもしれない

そして誰かに愛され、微笑みかけるように散る――…そんな散り方ではないけれど。


ひらひらとまだ諦めていない様子で散り、地面に落ちる。


まるで、今の私のように―――…。


「もう桃の花が散る季節なんだなー…って思ってさ」

「…もっと…咲いていたかったかもしれないですね…」

「そうだな…。なんかすっげー寂しいよな、この散り方。」


ねえ宏太―――…

私はまるで、この桃の花びらの様だよ

まだあなたのことをあきらめていないから、地面には落ちてないの…

綺麗になろうと頑張ってるの…


あなたのために―――…。



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