嘘つき②【-臆病-】
「冴木、慌てるな」
愁哉さんはフッとその表情を柔らげると、その女性の首筋に触れた。
「君はどうも落ち着きがない」
その声は優しく、広がりのある色を込めて、眼鏡の奥の瞳が愛しそうに細まる。
愁哉さんの右手は、首筋をかすめて、襟元を正した。
「ぶ、部長…」
冴木、その女性は慌ててまた頭を下げる。
そして、向かい直った彼女の瞳は真っ直ぐに愁哉さんを捉えて、染まった頬があたしの心臓をかき乱す。
「可愛らしい方ね」
あたしよりも年上だろう彼女に苦し紛れに出た言葉は、多分、いつも通り隠した微笑だった筈。
その一連の動作で
愁哉さんはいつもは見つめないあたしを見透かす様に眺めた。