嘘つき②【-臆病-】
いつも通り、愁哉さんは仕事を終えてうちを訪問する。夜中を過ぎない限りは。
一人での食事に間に合う様に、尚且つ、あたしを待たせない様に。
もう一度、会社に戻る事だってある。
「今日は折角来ていただいたのに申し訳ありません」
愁哉さんはレンズ越しにあたしを見つめた。
「いえ、構いませんの。私もいきなり、ごめんなさい。あの方、冴木さんと昼食を一緒にしましたわ。」
私が誘ったのだからお金は払うというのに全く受け取らなかった彼女を思い出して少し笑う。
「…冴木?」
愁哉さんの空気が少し揺れた気がしたけれどそれは見逃す程ほんの一瞬。