放課後Kiss
……気がつく前に。
俺は、そんな梨奈へと足を向けていた。
冷たい風を肌で感じながら。
背中を壁につけ、そのまましゃがんだ梨奈へと。
『…何、考えてるか分かんないって言われてもなぁ…』
多分、無意識に口に出ているのであろう言葉。
はぁ…、と不意に吐かれたタメ息。
…横に近づいている、俺にさえ気付かない。
…鈍感なのか…、ただボーっとしてるのか。
すると、ゆっくり立ち上がった梨奈。
そして、また耳に届いた…カタチの無いタメ息。
そんな梨奈を瞳に映して。
『…何、タメ息ついてんの?』
一瞬動きを止めて。
『……え?』
ゆっくりと顔を横に。
…そのまま、スッとなぞるような視線を上げて。
…俺を、瞳に映した。
少し、見開かれたその瞳。
…あぁ、そっか。
俺は梨奈を“知ってる”けど、
梨奈は俺を“知らない”のか。
なんか胸に突きつけられた、そんな現実に。
俺は軽くタメ息をバレない程度についた。