落下星 ~キミがくれた、永遠の初恋~

個人経営の寂れたコンビニには客の姿はほとんどなく、奥の成人向け雑誌コーナーで立ち読みする人が2人いるだけだった。


レジの男性もマンガに熱中していて、店内を気にする様子もない。


あたしはスカートからぽたぽたと落ちる水滴を気にしながら、食料品の棚に向かった。



……緊張で、胸が苦しくなる。



たまにテレビなんかで、万引きの常習犯が「スリルを味わうため」とか言っているけど、あたしにはまったく共感できなかった。

ただただ、罪悪感しかなかった。


周囲に誰もいないことを確かめ、棚に手を伸ばす。



『――次のニュースです。昨日からの集中豪雨により、A県では土砂崩れの被害が……』



店内に流れるラジオから“A県”という言葉が出てきたので、あたしは思わず手を止めた。


A県――那智が生まれ育った、星名島がある所だ。



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