陽だまり荘へようこそ♪

陽子

陽だまり荘は、陽子が生まれるずっと前から、そこにあった。
陽子のおばあちゃん、園子さんが管理人だった頃、陽子は、すぐ近所に両親ともに暮らしていた。
両親とも働いていたため、陽子は、園子さんと過ごす時間が長かった。
陽だまり荘の一階には、園子さんの幼馴染である、哲ジイがやってる定食屋があった。
陽子の記憶では、園子さんと一緒に、哲ジイの店で、夕飯を食べるのが日課になっていて、両親とも仕事を終えるまで、そこで待っていたように思える。
もう、遠い記憶であり、実際、哲ジイの顔も覚えてなければ、そこで何を食べ何をして過ごしていたのかという記憶もない。
かろうじて、園子さんは、写真でみてる笑顔のまま、陽子の心の中に生きている。
園子さんは、とても穏やかで、優しいおばあちゃんだった。
母方のおばあちゃんだったけど、決して母親は似ていない。
母は、どちらかというと、常にシャキッとして、しっかり者で、スキのない人だった。
陽子は、この町に帰ってきたときに、近所の人たちに「園子さんに似てきた」と何人の人に声をかけられたろう。
遠い記憶の中の園子さん。
そして、写真の中の笑顔の園子さん。
この町に帰ってきたのは、陽子の人生再スタートの時だった。
住み慣れた町でもなく、新しい町でもなく、この町を、そして、陽だまり荘を選んだのには、そうなるべく運命があったのかもしれない。
いや、そんな大袈裟なものはなかったかもしれない。
でもきっと、園子さんが、そう願っていたからに違いないと、時々ふとそう感じる瞬間もある。

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表紙・目次

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