君を追いかけて

そう思った時


ガッシャーン!


と、物凄い音がした。

音の原因は、湊の筆箱の中身が机から落ちたせい。


「…あ」


かすかに小さな声を出す湊。

大きな音にクラス全員が一瞬だけ振り返った。


「…やべ」

ポツリ、とまた湊は言葉を言い残し、落ちたペンなどを拾っていく。

おそらく30本はあるだろう。


あたしは無意識でペン拾いを手伝った。

「だ、大丈夫?」


自分から湊に話し掛けたのは初めてかもしれない。


湊はあたしの質問に何も答えず、ただただペン拾い。

女子ぎらいだもんね、無視されてもおかしくないな。

あたしも湊のペンを拾う。

そして全て拾い終え、あたしが拾ったペンを湊に渡した。


「はいっ」


どうせ返事ないからはいっ、なんて言わなくていいのに。
また無意識で言っちゃった。

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