Tell a lie


その女の人は端正な顔つきで、インテリなメガネをかけていた。

スーツもきちっと着こなして、私より4~5歳上だろうか。

どっからどう見ても仕事ができそうな人だった。


私たちは奥の部長室でエリス部長の帰りを待つことにした。

エリス部長のアシスタントの女の人は綺麗な足を斜めにソファーに座った。

それにつられて私も向かい側に座った。



「エリス部長のこと、どう思った?」

「え?」

「気難しそうな人?」

「はい・・・、私怒られてばかりで・・・その、ファッションに興味が・・・」

「まぁ、見るからにそうね。」

「す、すみません。」

「あの人はね、私の唯一尊敬できる人よ。

 常に最先端に立って、流行の流れを読むの。

 あの人についてから、あの人の感覚が鈍るなんてところ、見たことないわ。」

「じゃぁ、何故異動に?」

「社長の親戚の息子、つまりコネよ。

 そいつがどうやら、この椅子を希望してきたらしいの。」

「そうなんですか。あの・・・こんなタイミングで変なことかもしれないですけど」

「何?」

「お名前、伺って良いですか?」

「あら、言ってなかったかしら。中芽 由利(なかめ ゆり)よ。由利で良いわ。」

「ゆ、由利さん、本当なら由利さんがここのアシスタントじゃ?」

「ふふふ。甘やかされて育ったお坊ちゃんの面倒を見ろって?

 嫌よ。

 私は自分で手芸部門に異動希望を出したわ。

 もちろん、エリス部長のアシスタントとして。

 私の仕事はね、あの人が何不自由なく、スムーズに仕事ができるよう、サポートすることよ?

 今は、先に手芸部門に入ってエリス部長のために、準備してるところ。

 あなたも、アシスタントなら、それくらいの仕事はなさい?」

「でも私、怒られてばかりだし・・・」




気付けば私は由利さんに愚痴をこぼしていた。





< 9 / 21 >

この作品をシェア

pagetop