【コメコン】参加作品~メディカル・パニック
薄暗い部屋で一人、オペ前のイメージトレーニングをする浅田。
その浅田に対して、無神経に声を掛けて来たのは心臓外科教授の原口であった。
「浅田君、今日のオペには我が心臓外科の威信が懸かっているんだ。
どうか、私に恥をかかせないでくれたまえよ!」
浅田は、原口の顔を見る事もなく答えた。
「俺は別にアンタの為にオペする訳じゃ無いんで……まぁ、これが成功すれば結果的には同じ事なんですけどね」
「結構、結構。それで構わんよ。とにかく、オペを成功さえしてくれればね」
そう言い残すと、原口は不敵な笑みを見せ、去って行った。
「チッ!…あのタヌキが……」
根回しと要領の良さで人脈を広め、教授にまで登りつめた原口を浅田はあまり好きでは無かったが、今回のオペを引き受けたのはそれが超難解なやりがいのあるオペだったからである。
浅田という男は、そういう男だ。
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