神人
しかし、王女はよっぽど怖かったのか、さっきから自分の身体を自分で抱き締め震えている。
そんな王女にオペラが優しく肩に手を置く。
「もう大丈夫よ。猿達もいないし」
ビオラが言っても、王女の震えは止まらない。そして、
「魔獣が怖いんじゃありません…。魔獣に殺されてしまった人達が…」
耐えられなくなったのか、とうとう王女は泣いてしまった。オペラが優しく背中を撫でてあげている。
ビオラは王女から離れて、改めて広間を見回してみた。だが何も変わらない。変わったのは、魔獣の死体が増えただけ。
「酷い光景ですな」
と、王がビオラに近付いて来て言った。
「あなたの友人は?」
ビオラが聞くと、王はゆっくりと手を上げ一つの死体を指差した。
「あれですよ。今は随分と様変わりしてしまいましたが」
「……」
王の友人は喉を斬られ、大量の血を流し倒れていた。
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