神人

ビオラは目を閉じ黙とうしてから、話を変えた。
「王女は大丈夫ですか？」
今だうずくまっている王女を見ながら言った。王はそちらを見ず、どこか悲しい目をしながら言った。
「あの子は昔から人の死に敏感でね。以前の王の破天荒な振る舞いで、自殺する者も何人かいたんですよ。それを見たあの子は、その時からどんな者でも死ぬのが嫌なんだ。例え見知らぬ者でも…」
「……」
やはりまだ王女は子供だ。
人が死ぬのは自然の摂理。それを受け入れなければ、この世を生きていけない。しかも、全ての人間を死なせたくないと言うのはとても甘い考えだ。
こうゆう子はきっとバースは嫌いだろうな。現実を受け止められない子。
「でも、その気持ちが一番大切なんだろうな」
ビオラは静かに呟いた。
この世の全てを守る気持ちがなければ、平和を掴む事が出来ない。
「バース、大丈夫かな…」
世界を救う神人は、今も戦っているはず。