神人
声のしたほうを見ると、二人組の警察官が一人の男を追っていた。何事かと様子を見ていたら、男がまだ十代にも達していないような少年の首に腕を回し、もう一方の手で少年の頭に銃口を向ける。少年の母親が「ケイト!」と子供の名を叫んだ。
「動くなあ!」
銃を抜こうとしていた警察に男が叫び、警察が止まった。
ヘウ"ンは立ち上がり、バースの隣に立つ。
「バース、助けに行きましょう!」
人々の平和を守るのが神人の仕事。だがバースは冷めた目だ。
「何で?」
「は?何でって…」
「あーゆー小さな事件は警察に任せとけばいんだよ」
「子供が人質に取られてるんですよ!」
人一人の命がかかってるんだから小さい事は無い。でもバースは変わらず冷めた目で見る。まるで熱くなっているヘウ"ンをバカにするかのように。ジュリアさん達は黙って見ている。
「あの少年が人質に取られてるから何?これが任務だったら動くけど、タダ働きは御免だね。あの少年は運が悪かったんだ」
何なのこの人。扉を封印したから伝説の神人って言われてるけど、全然駄目じゃない。こんな人の下で働いたって神人になれない。
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