神人

正義感は強いが何も考えずに行動する。人を助ける時は一度冷静になってから動きなさい。
卒業する時に大好きな先生に言われた言葉。いつもその言葉を守ろうと思うが、肝心な時に出てこない。
こっちが何も出来ないと察知したのか、男は嫌味のある笑みを浮かべ、
「バカかてめーは！」
向けられた銃口を見つめ、ヘウ"ンはまだ見えてこない死の映像に少なからず安心した。
(撃たれても死なない…)
だが撃たれたら血も出るし痛いから嫌だ。
ハンマーが上げられた銃に思わず目を閉じてしまう。
男の断末魔のような悲鳴を聞いたのはその時だった。
「ぎゃあああ！」
慌てて目を開くと、男の右手の甲に容赦なくナイフが刺さっていた。
右手首を握りその場にうずくまる男に、一人の神人が近付く。
「あいつもバカだけど、てめーもバカだよ」
バースは男の右手からナイフを抜き、傷を治癒の力で治した。男は抵抗する事もなく警察に連行されて行き、捕まっていた少年は無事に母親の元に戻った。
その様子を見ていたヘウ"ンの中に、空しい何かが通り過ぎていく。