TEAR-DROP*一滴*
外で見回りの看守の声が聞こえた。
「なぁ、桐岡、あいつちゃっかり
いい子なんじゃねぇの?だってさ、
ここに来るまで暴れてたらしいけど
あんなに大人しく作業してるぞ?」
「だよな。目とかもめちゃくちゃ
優しそうだもんな。本当に人、
殺したのか??」
「さぁ…でもやっぱ高校生だな。
なにより素直だ。」
「刑務所じゃなくて、少年院でも
いいんじゃないか??」
…なんか、ありがとうございます。
信用されるのはめちゃ嬉しいことです。
更正…しようかなぁ。
いやいやいやいや、
やることがたくさんあるんだ。
こんなところで何年間も無駄にはできない。
そうして一時間くらい
洗濯バサミを組み立てるという地味な作業に
没頭していると、あることを思いついた。
このかたい針金で鉄格子、切れないかな…?
ためしにがりがりとやってみる。
削れる量は少ないが大家に削れている。
地道にやっていけば、自由になれる。
そう確信し、
看守が手薄になた時を見計らって
削りだしていく毎日が過ぎて行った。