天使のいいなり~僕と天使と聖なる夜
「あぁ、それか。」



永瀬が写真を見つめる。
目を細め、穏やかな顔と声。
まるで、昔を懐かしんでいるみたいで…。


目の前にいる永瀬のこの表情と、写真の中の永瀬と里緒ちゃん。

なんで、こんなに気になるんだろう。

なんの変哲もない、ただの集合写真なのに…。




「この子さ…。」


俺は写真の中の里緒ちゃんを指差しながら言った。


童顔な里緒ちゃんは今とほとんど変わっていなくて。
違うところといえば、髪の色と髪型くらいで。

俺が知ってる里緒ちゃんは、少し茶色の髪で肩につくくらいの長さ。柔らかいふわふわのパーマをかけている。
触りたくなるような、つるっとした肌。
ナチュラルなメイクで、とても女の子っぽい。

写真の中の里緒ちゃんは、髪も黒くストレートで、元気いっぱいな無邪気な女の子っていう感じがした。化粧もしてないせいか、今と比べるとより子どもっぽさが感じられた。



「里緒?そういえば、里緒も夏目と同じサークルだもんな。」


『里緒。』

永瀬の口から発せられた言葉。
ただ里緒ちゃんの名前を呼んだだけなのに、どうしてこんなに胸がざわつくんだろう…。


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