天使のいいなり～僕と天使と聖なる夜
「嘘だろ…？」



写真に向かって、俺は呟いてしまった。

答えが返ってくることなんてないのに。


目が自然と見開いていくのが分かる。


俺、なんで今まで気づかなかったんだろう…。
この２人、『あのとき』の２人だ。


パンっと風船が割れたかのように、あのときの光景が鮮明によみがえってきた。




あれは高２の初夏だった。


放課後、１人教室で実沙希を待っていたとき。
俺は無意識に外に目を向けた。


窓の向こうには、見慣れないセーラー服の女の子。
驚くほど透明で、白い肌。
華奢で、小さな身体には不釣合いな位の大荷物を両手に持っている。



そんな女の子に駆け寄っていく、１人の男子学生。


男に話しかれられた、セーラー服の女の子。
驚いたり、怒ったり、笑ったり、照れたり。
クルクル変わる女の子の表情。


そして、その女の子をとても愛しそうに見つめる男。


なにを話してるかなんて、もちろん聞こえるわけないけど、お互いを思いあっているっていうのは、すぐに分かった。


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