天使のいいなり~僕と天使と聖なる夜
五十嵐の質問に、すぐに答えられない俺。


はっきり言えばいいじゃないか。
ただそれだけのコトなのに…。



五十嵐の言うとおりかもしれない。

確かに。
ほんの少しだけど、学食に行く回数が減ったのは事実。

昼飯の時間が合えば、あの秘密の場所で里緒と過ごしてるからだ。



『里緒と一緒に、違う場所でメシ食べてるから。』



こう言えば言いだけなのに、俺の口から出しづらい言葉。

それはきっと、相手が五十嵐だから…。


1年間、五十嵐と喋って感じたこと。

自意識過剰かもしれないけど、五十嵐は俺に好意を持っているんじゃないかなって…。


俺はどこにでもいる、普通の男だ。
特別目立った特長もない。
自慢できることも、されることもない。
はっきり言えば、つまんない男だと思う。


そんな俺に、五十嵐はよくかまってきて。

はっきりと告白されたわけではない。



こう言えば聞こえはいいかもしれないけど、それはただ単に俺の逃げなんだ。

知らないフリをして、五十嵐と向き合うことを避けている。


いつかは、はっきりと言わなきゃいけないんだ。
里緒のこと。
そして、五十嵐のこと。


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