天使のいいなり~僕と天使と聖なる夜
「……うん。なんとなく。」

「なんとなくか。なんか…、夏目くんらしい答え。」

「ごめん。ちゃんと…気づいてたよ。俺に好意を持って接してくれてるんだって。」

「そっか。あたしの気持ち、少しでも伝わってたんだね…。まわりを固めれば、いけるって思ったの。夏目くん優しいから、まわりが盛り上がってそういう雰囲気になれば、夏目くん断れないって。流れにまかせて、付き合えると思ってたのに…。」



“優しい”…か。

それって、褒め言葉なのか?


俺の中で、“優しい”は“優柔不断”と紙一重な気がする。



今だってそうだ。

五十嵐の気持ちに気づいてるのに、俺はその答えを五十嵐に伝えていない。


“断る”のが前提だから、五十嵐を傷つけないために、聞かなかったことにすればいいのか?



それが、五十嵐に対しての優しさか?



「里緒ちゃんと、付き合ってるの?」

「………。うん。」

「…いつから?夏休み前?」

「夏休み…始まって、すぐ。あのさ、五十嵐。俺…。」



今ここで、はっきりと言わなければいけないんだ。

そう思った瞬間。


ドンッ!!

五十嵐が真っ直ぐ、俺にぶつかってきた。


< 63 / 129 >

この作品をシェア

pagetop