天使のいいなり~僕と天使と聖なる夜
「でも、本当によかった?」

「ん?なに?」


手を繋ぎ歩きながら、里緒が聞いてきた。



「夜はウチでゴハンって。断ってもよかったんだよ?」

「なんだ、そのことか。全然平気。つーか、むしろ行きたいくらい。俺、里緒の家もおばさんも大好きだから。おばさんのビーフシチュー、激うまだし。」



そう。

今日の夜は、里緒の家でおばさんと一緒に3人で誕生日を祝うことになっている。


小松家は、誕生日は家族みんなでお祝いするっていうのが決まりらしい。


だけど、里緒の親父さんの単身赴任や、紗英さんの仕事とかで、それもだんだん難しくなってきてるみたいで。


だから余計に、おばさんが里緒の誕生日を楽しみにしてるっていう気持ちは、よく分かる。


口には出さないけど、里緒もおばさんの気持ちに応えたいって、知ってるんだ。



俺は1人っ子だし、母親も小学生のときに亡くなった。

親父との関係は悪くはない。
だけど、俺が中3の終わりに海外赴任が決まって。
日本に残った俺は、1人で過ごすことが多かった。


だからかな。
里緒の家に行って、おばさんや紗英さんとのやりとりを見てると、心があったかくなる。
“家族”って、いいなぁって思うんだ。


育ってきた環境のせいもあるかな。

俺ってたぶん、人1倍結婚願望が強い気がする。


< 82 / 129 >

この作品をシェア

pagetop