天使のいいなり~僕と天使と聖なる夜
無言になった里緒。

俺のほうをチラッと見てきた。




俺から視線を外すと、俯く里緒。


大きく深呼吸をする。



そして。

ゆっくりと、話し出した。



「今から…行きます。たぶん、11時前には着けるかも…。ハイ…分かりました。………それじゃ。」



電話が終わったのに、俯いたままの里緒。

ようやく顔を上げ、俺に向けられた顔。
そこには、いつもの里緒の笑顔はなく…。



「あのっ…、その…ゴメン…なさい。……急に、用事が出来ちゃって…。」


まるで悪いことをして、謝る子どもみたいだ。
放っておいたら、きっと泣き出してしまうんじゃないか?


そんな里緒を抱き寄せ、ぽんぽんと頭を撫でる。



「謝んなくっていいよ。里緒のこと責める気なんて、これっぽっちもないから。そんな顔すんなって。俺、里緒の用事が終わるまで、ちゃんと待ってるから。」

「どうしてそんなに優しいの?」

「それは、里緒が優しいからだよ。……行こう。水野さん、里緒のこと待ってるんだろ?」


< 86 / 129 >

この作品をシェア

pagetop