天使のいいなり~僕と天使と聖なる夜
ちょくちょく行ってるうちに、だいたいのメニューは覚えていた。


里緒に聞きながらがほとんどだけど、いないよりはマシだろう。

店内が落ち着きを取り戻したのは、ランチタイム終了から2時間も後のことだった。




俺達はかなり遅めの昼食をとった。

「いやー、本っ当に助かったよ。夏目くんもありがとな。あっという間に仕事覚えてさぁ。筋もいいから、スカウトしちゃおっかな?拓馬と夏目くんの2枚看板。いいんじゃねぇ?」

「それ、いいっすね。売り上げ、かなりアップ狙えますよ。そしたら、時給アップも夢じゃないっすよね!?」

「やっぱりそう思う?まかせとけって。どう?夏目くん。」

「はは…。考えときます。」




俺達が店を出たのは、夕日が沈みかけた頃。

後ろから、水野さんに声をかけられた。


「今日は助かったよ。少ないけどコレ。」


目の前に差し出された、茶色い封筒。


「え?いや、そんな悪いですよ。そんなつもりでやったわけじゃないですし、本当に受け取れませんって。」

「本当に気にしなくっていいから。受け取ってよ。俺の気が済まないから。お詫びも兼ねてさ。」

「は、はい…。」


水野さんのゴリ押しに負けて、俺は茶色い封筒を受け取った。
そして、帰る瞬間耳元でこう言われたんだ。


『クリスマス、店に来て』って…。


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