灰色リリィ
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家へと向かう道を、ゆっくりと歩く。
冷たい風が頬を刺すけれど、今日はもう、痛くなんか無い。
汚い感情ばかりでどす黒かった胸の中も、今はすっきりしていて、清々しい。
思わずゆるみそうになる口元を慌てて結んで、一歩一歩、しっかりと踏みしめながら歩いた。
そして、いくつかの電灯の下を歩いて、小さい頃よく遊んでいた公園の前を通り過ぎようとした、その時。
「…バンド…やめようかな……」
そんな声が、耳に届いた。
聞き覚えのある声に、足が止まる。
この声は…。
視線をめぐらせると、公園に入ってすぐのところにある小さなベンチに、誰かが座っている。
そして、ベンチの横にぽつんと立った電灯に照らされる、灰色の髪を見つけたとき
私の中で、何かが動いた。
「…だ、駄目です!!」
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