灰色リリィ
…何だ、痴漢か?
最初に思ったことはそれだ。
このあたり、よく出るらしいからな。
この最悪な気分を消すために人助け…いいかも。
だけど、ぼんやりとそんなことを思いながら振り返った先に居たのは、公園の入口で思いきりこっちを見ている女子高生で。
俺はただ、眉間に皺を寄せて固まった。
いや、駄目って何が?
頭の中で踊る数え切れないほどのハテナマークを処理できないまま、女子高生はどんどんこっちに近づいてくる。
何なんだ、ほんとに。
だけど、俺が座るベンチのすぐ傍に立つ外灯の下まで女子高生がきたとき、俺は目を見開いた。
―…あの子だ。
ライブハウスで、泣いていた女の子。
女の子は、顔を真っ赤にさせて、ぎゅっと唇を結んで、俺の目の前に立った。
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