灰色リリィ




「いや、すごく嬉しいよ。ありがとう」



まるで初めて言葉を覚えたみたいにたどたどしく口が動く。


そんな自分に心が痒くなる。


でも全然、嫌じゃない。

むしろ心地よすぎて、どうしていいかわからない。


…はじめてだ。


俺らの音楽を、こんなふうに思い切り、誰かに褒めてもらえたのは。


溢れるほどの嬉しさで、胸が熱くなって、心が震えた。



驚いたように目を見開いた女の子に再度笑いかけると、だんだんと頬に赤みが帯びてくる。


その時、可愛いな、なんて思ったことは、心の奥底に沈めることにした。






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