灰色リリィ
こんな

熱くて

痒い気持ち


どうしたらいいのかわからねぇ


胸がいっぱいで、息がつまりそうだ。




緩みっぱなしになりそうな口元をきゅっと結んで、ジーンズのポケットから携帯を取り出して電話帳を開く。

通話履歴の三番目にある潮田の名前を見て、俺は決心を固めた。



―…俺らの音楽を、好きだって言ってくれる人がいる。


また聞きたいって言ってくれる人が。


目を閉じて、深く息を吐く。


胸に灯る熱は、胸から、頭のてっぺん、足の先まで伝わっていく。


……久し振りの、感覚だ。


地元からここへ出てこようと決意したときと同じように、心が震えてる。



――バンド、やめないで下さい!!


あの紅潮した頬と、強く光る両目が。



ボタンに乗せた親指に、力をくれた。





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