灰色リリィ
「待ちなさい!!」
背後から聞こえる母の怒声を振り払い、私は逃げた。
わけも分からず殴られた左頬はじんじんと痛くて、気を抜けば泣いてしまいそうで。
ぐっと唇を噛み締めて、ただひたすら夜の街を走った。
心の中は、どろどろの黒い感情が渦巻いていた。
…それは一番、私が恐れていて嫌いな、憎しみと怒り。
誰にも打ち明けられないまま蓄積していったそれは、今日、とうとう心の鍵を壊し、見えない鎖で繋ぎとめられていた私の足を解き放った。
…それでもまだ、きりが無いみたいに、心の奥に溜まっていく。
そんな消化されない思いばかり、溢れて。
私は、自分がますます嫌いになる。
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