灰色リリィ
灰色リリィ
季節を二つ越して、夏がやってきた。
7月下旬、夏休み。
じりじりと頬を焼く太陽の熱が、痛い。
夏季講座の帰り、私は、教科書でずっしりと重くなったリュックを背負いながら、予約していた日本史の参考書を受け取りに行くため本屋へ向かって歩いていた。
日曜の昼間ということで、真上からの熱を受けて照り輝くアスファルトの道は、大勢の人で溢れている。
熱い息を吐き出すと、額にじわりと汗が浮かんだ。
――…あれから。
相変わらず、家は荒れているけれど。
私は、辛くなったときは自分に正直に、感情を吐き出すようになった。
友達の前でも、泣けるようになった。
そう。
ずっと心を閉ざしたまま上辺だけで付き合っていた友達も、以前から何かを感じ取っていたのか、私が初めて涙を見せたときには安心した、なんて言ってくれて。
それがすごく、嬉しくて。
大事にしなきゃって思った。
もっと真っ直ぐに、周りの人と向き合いたいって。
誰かの事をこんなふうに思えたのは、正直、初めてで。
…それもこれも全部、あの人の、あの歌のおかげなんだ。
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