灰色リリィ
何が起きるのかと体を強張らせて、数秒―いや数分そのままステージを凝視していると、目が暗闇に慣れていき、目の前で三つの人影が動くのが見えた。
徐々に、照明が点いていく。
一番初めに、目に飛び込んできたのは―……
照明に照らされ、きらきらと光る、灰色の髪。
少しはねていて柔らかそうなその髪に見惚れていると、切れ長の鋭い目と目が合って。
心臓が、トクンと高鳴った。
マイクの前に立った灰色の髪の持ち主は、ゆっくりと数名の観客を見渡して暫く目を伏せたあと、数秒、ドラムとベースの人にも視線を送って、小さく頷いた。
マイクを通して、彼の声が耳に届く。
「はじめまして。灰色リリィです」
次の瞬間、始まりを告げる爆音が、ライブハウスを揺らした。
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