灰色リリィ


ずっとずっと、我慢してた。


涙を流すこと


人に自分の弱さを見せること。



常に私が対峙する、黒くて汚い何かに負けてしまう気がして


それと同時に、許してはいけない何かを認めてしまう気がして

悔しくなるから。

もっと自分が、惨めになるから。



荒れた家の中、いつもちゃんとした理由は分からないまま、親に殴られてけなされても、絶対に涙だけは見せないようにいつも唇を噛んで耐えていた。



……ずっとずっと、気持ちに蓋をしてた。




だけど涙はあたたかくて。


まるで見えない誰かの手が、冷えた心を優しく撫でていくように、心地よくて




心が、澄んでいった。




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