リミテッド
「香奈子、今日サークル中止だろ?」


天気予報は一日中雨。
テニスはできなそう。


「うん。たぶんね」


ゴトゴト揺られながら、窓の外を見る。


と、突然伸治があたしを抱き寄せて、


「今日、香奈子んち泊まり行ってもいい?」


こそっと耳元で囁かれて、一気に熱くなる。


しっ、伸治、近いっっっ。


いきなり朝から色気全開な声出さないでよ~。


今あたしかんぺき顔真っ赤だ。


上からはクスクス笑う声が聞こえるし、今、絶対あたしのことからかったっっ。


ちょっと膨れて見上げると、
首をかしげて『どう?』って、目で聞いてくる。


もちろん断る理由なんかなくて、こくんと頷く。


帰ったら掃除しなきゃ。


あたし、やっぱり単純かも。




< 29 / 73 >

この作品をシェア

pagetop