リミテッド
伸治は、あたしみたいにうじうじ考えることなんて、ないのかな。

いつも真っすぐで、正直で、人のことを本当に大切にするんだ。

かっこよさが中から溢れてくる、そんな人。




「ごめんな、今日の1限サボれなくて」


「ううん、いいの。
伸治が卒業できなくなっちゃったら大変!」


今日は朝からゼミの日だから、遅刻できないのは分かってる。

だから、引き止めるつもりなんて全然なかった。

ただ、伸治があんまり優しいから、甘えてしまっただけ。


「うるせっ!卒業できるわっ!」


あたしの頭をぐしゃぐしゃにしようとするから、慌てて逃げる。



「ほんと、俺も一緒にいたいけど…。
明日はバイト終わったらソッコー行くから」


「うん、待ってる」


伸治の手を両手でぎゅって掴んで、じっと見た。



「んな顔してると、キスするぞ」


恥ずかしがるあたしをからかうときに、いつも言う言葉。





「…いいよ」





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