リミテッド
「今までのこと、悪かった。
だけど、今日は本当に仕方なかったんだ」


「分かってるよ」


あれ、あたし、笑ってる…?


変なの。
これから捨てられるって言うのに、笑顔が顔に張り付いちゃったみたい。


「香奈子、もう一回考え―――」


もう、いいよ、伸治。


心配して来てくれた、それだけで充分。


「早く美穂ちゃんの所に戻ってあげて?」


そして、美穂ちゃんと幸せになって。


「それは、いいんだ」


「あたしに気使わなくていいよ」


「いや、ほんとにいいんだ」


どこまで優しいの?


だけど、それが逆にあたしを傷つけてるんだよ?


涙が出る前に、

あたしが伸治を嫌いになんかなってないってバレる前に、

帰って…。


「っっっあたしのことなんかほっ―――」


「美穂は彼氏に任せてきた」




< 55 / 73 >

この作品をシェア

pagetop