リミテッド
『昨日、伸治ほんとはバイトなかったのに、野沢が休み取った代わりだったんだ』


「あ、そーだったんだ」


電話を手で押さえて、口パクで


“バイトの話みたい”


って説明したら、伸治は寝っころがり直して、ひじを突いてつまんなそうにあたしを見上げた。


『そしたら伸治、昨日のバイト中、まじ、すげー機嫌悪くてさ』


「え?」


『香奈子ちゃん知らないかもしれないけど、伸治、香奈子ちゃんのことになるとマジめんどくせーの』


え…知らない。


『俺に八つ当たりしてさー。大変だったんだ。
1分でも仕事延びたら許さないって、最後の方なんてピリピリしてて』


うそ、そんな伸治、見たことない。


じっと見ると、何も知らない伸治は、にこって笑いかけてくる。


そうそう、伸治はいつもこんな感じ。


穏やかで、優しくて。



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