リミテッド
「圭くん、実は今、その伸治が隣にいるんだけど」


笑いをこらえて言うと、向こうでガタガタって音が聞こえてきた。


『えーーーっ!!!』


電話の向こうから、“伸治と一緒らしいよ”って声が聞こえてくる。


『今の内緒な、内緒。
じゃ、早く電話切り上げなきゃだねっ』


ちらっと伸治を見ると、明らかにイライラしてる。


ごめんって手でやって、


「…そ、、、だね」


って言うけど、なんだかおかしくて。


『で、今日電話したのは、野沢が謝りたいって。
換わるね』


『―――もしもし?』


「あ、野沢くん?」


伸治の眉がぴくってしたの、見逃さなかったよ。


『ごめんっ!!!
俺のせいで、高山の機嫌悪くなかった?』


「ううん。大丈夫だよ。
ってか、伸治に換わろうか?」


しばらく沈黙した後、野沢くんが弱々しく頷いた。


< 66 / 73 >

この作品をシェア

pagetop