騎士戦争
戦章
鈍い銀色の中、そこだけが張り詰めていた。
(いやな天気、暗くて緊張するこの雰囲気。 …こんな時こそ、冗談の1つでも言いたいところだな)
チラリと自分の隊の者たちを一瞥しながら、ロッシュは人知れずため息を吐く。
彼は馬に乗っていた。それもこれも7日前の件のおかげで、オーディンに向かって進んでいる。
この中には幸い「初陣です」という赤ん坊はいないが、この空気に怖じ気づいてるガキはいるだろう。
だが、何度も戦を経験してきたロッシュとて、そのガキとやらに成りかけていた。
こんな空気は何年ぶりだろうか。
自分にとっては久しぶりの大戦。初めて戦場に来たときの感情がちらつく。
──ああ、いやだ。
剣へと持っていきたい手を遠慮してしまう。
小さな音さえ、たてることを禁じられているような気分だ。
いや、実際にそうなのか。
(思ってたよりデカい戦いになりそうだな)